闇へ入り光を持ち帰る

目の前に手をかざしても見えない暗闇で
視覚に障がいを持つ方にリードしていただき
初対面の8名が1時間を共に過ごす体験をした。

照明が落とされ闇が満ちると、まず天と地に上下から引っ張られる感覚が
生じ、宙に浮かぶ液体の入った袋が自分だった。
支えられている。
外からの情報が遮断され、意識が内側へ集中し、最初に出会ったのは
揺るぎないサポートの力だった。宇宙ありがとう。

暗闇へ慣れてくると、景色が見えるような気がしてならない。
視覚以外の感覚で捉えた情報へ合致しそうなビジュアル要素を
記憶から探り、風景を再構築する作業が自動的に始まった。
風景が次々と脳裏へ映し出され、修正が加えられる、しかし
到達点が分からず高速化する一方だ。
体験を他の人と共有できない状態が続き
気が狂いそうな、狂ってしまったような恐怖に襲われた。
救ってくれたのは人の話し声だった。
ふだんの暮らしや日常を感じるノンビリ朗らかな声、
他愛ないおしゃべりが、わたしも同じ世界の住人と安心させてくれた。

視覚情報が無く飽きそうになったら、他の刺激を自然とさがし、見つけた。
分厚い記憶と体験が自分の内にあると知った。
機能を失っても、わたしたちの世界は変わらず豊かだ。
できることが日々減る家族の心中を慮っていたが、
その人なりの豊かさの中にいると信頼できた。

大切な機能や、欠けがえのない人を失うのが怖かった
けれど、大丈夫と思えるようになった。
先達が知恵と希望の灯りを掲げ、導いてくださる。
共に試行錯誤し体験を分け合う仲間がいる。
たとえ一人でも、一人ではない。


ヒトで良かった、
暗がりに居るのが昆虫や動物なら、相当ビビった。


ゲド戦記』のゲドの最も手強い相手は闇だった。
闇の正体を明かすことでゲドは勝利した、仲間と共に。
いちばん恐れているものを闇は投影する。
克服のチャンスだ。


そのときたまたまそこへ集まった人たちと暗闇を歩き、
お茶をいただきながら無駄話する中で
恐れていたものと出会い、克服する。
グランフロント大阪積水ハウスにて、8月4日まで。
3,500円要予約ナリ。

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